栄養士の活動
当院は、茨城県南部の地域医療を支える医療法許可病床数250床、25診療科の急性期病院です。茨城県の高齢化率は、関東1都6県の中で2番目に高く、当院のある土浦市は、令和4年4月1日時点で29.29%。5年前と比較し1.96%上昇しています。
また、厚生労働省の人口動態調査によると窒息事故の死亡者数は年間3500人以上。うち2500人は80歳以上とされており、高齢化率の上昇が誤嚥・窒息事故の大きな要因となっていると考えられます。
誤嚥・窒息事故に占める患者影響度5・4の割合は50%を超え、患者個々の摂食・嚥下機能に合った食事を提供する事の重要性は増しています。当院では、令和4年度より摂食嚥下サポートチームを立ち上げ、入院後摂食嚥下機能障害のある患者に積極的に介入。VE検査等を実施しながら、適切な形態調整食を提供出来るよう努めてきました。
しかし、チームの活動日が週1回である事から、入院から介入まで最大7日間のタイムラグがあります。医療安全管理係長が集計したデータでは、当院で発生した窒息事例の84%が入院後7日以内に発生しており、その期間の対策が急務となりました。
そこで、歯科口腔外科医師を中心に摂食嚥下サポートチームで、外来での問診の結果を基に入院時から医師の適切な食形態の選択をサポート出来る問診票を作成し、医療安全管理係長と協力しながら運用を開始しました。
作成には、咀嚼機能を客観的に評価出来るよう『総義歯装着者の食品摂取状況』『摂取可能食品の調査による咀嚼能力の評価』『改良型咀嚼能率判定表(咀嚼スコア10)の有用性の検討について』の3つの論文を参考にしました。
問診する食品には、論文に掲載された咀嚼指数が示されている100種の食品の中から実際、病院給食で提供される可能性の高い物を選定しました。
導入後の使用状況についての調査では『具体的な食べ物名が記載されてあり参考になる』という意見があり、入院時の食形態を選択する上である程度参考になったと思われます。
一方で『緊急入院時は問診票を見る余裕がない』『入院前のレベルと比較し、入院時のレベルが大きく低下することがあり、食種はその場で患者の状態を見て判断している』などの意見も聞かれました。
今回作成した問診票は、『入院時に医師が簡便に使用でき、入院直後の窒息事故を予防する』為の物で、その後の食形態を決定する物ではありません。退院に向けてVE検査や、認知機能検査等を組み合わせ、常に個々人の病状にあった食事を提供出来るよう今後も多職種で連携していきたいと考えています。