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管理栄養士の活動

重症心身障害児(者)病棟 『食』の療育イベントについて
 兵庫あおの病院は兵庫県の中南部に位置する花の町として知られる小野市にあり、重症心身障害児(者)病床200床と回復期一般病床50床を有する病院です。
 重症心身障害児(者)の方は幼少期に入所され、人生の大半を当院で過ごされる方も少なくありません。つまり、入所者の方々にとって当院は生活の場であり、家でもあります。ですから、兵庫あおの病院 栄養管理室では『楽しみ』としての食事の側面をより大切に考え、かつ安全な食事を提供することを常に心掛けています。
 しかし、コロナ禍を経てこれまで培われてきた様々なイベントを縮小せざるを得ない状況が続き、イベント経験のあるスタッフも入替り、食に関わるイベントが開催できない期間が続いていました。そんな中、療育活動を担っている療育指導室の保育士から声をかけていただき、療育指導室や病棟職員、言語聴覚士など多職種と共同して食に関わるイベントを実施することができました。今年の夏に行った『海の家 あおの家』と称して炭酸ジュースやかき氷を提供したイベントについてご紹介します。
 当院の重症心身障害児(者)病棟では経口摂取が可能な全ての方に嚥下に配慮する必要があり、液体をそのまま提供することができないため、炭酸ジュースにもトロミをつける必要があります。炭酸をキープして泡立たないようにトロミをつけることは非常に難しく何度も試作を繰り返しました。かき氷も溶けて液体にならないようにトロミ氷にしました。最初はかき氷機が空回りして上手く削れませんでしたが、表面を少し解凍させる等の工夫をすることで上手く削れ、ふわふわのかき氷に仕上がるようになりました。
 イベントでは普段、体験できない炭酸ジュースのシュワシュワ感を初めて体験されて驚いたような表情をされる方、以前によく飲んでおられ懐かしさを感じられているような表情をされる方、かき氷の冷たさに顔をしかめたものの甘いシロップの味を感じて一瞬で表情が和らぐ方など、様々な反応が見られました。
 経口摂取が難しい方には、炭酸ジュースを開封する時や注ぐ時の音を聞いていただいたり、かき氷を手で触って感触を楽しんでいただいたりすることもできました。
 このようなイベントは入所者の方々の反応を直に感じることができるため、重症心身障害児(者)病棟のある病院に勤務する管理栄養士の醍醐味であると感じています。これからも『食』を通した体験を味わっていただけるように、多職種と共同して様々なイベントを実施していきたいと考えています。