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管理栄養士の活動

地域がん診療拠点病院における管理栄養士の取り組みについて
名古屋医療センターは、入院病棟から名古屋城を臨むことができ、37科の診療科と656床の病床を有する病院です。当院は地域がん診療拠点病院として、がんに関する診療体制や研修体制、情報提供、他の医療機関との連携を積極的に行っています。近年、がん治療は、治療の大きな進歩により、良好な治療結果が得られる時代になったと言われています。しかし、その反面、副作用による食事への影響も少なくありません。また、がんの病態そのものによって、十分に食事が摂れず栄養状態の悪化をきたすことで、有害事象をさらに悪化させ、治療の完遂率や予後、QOLに悪影響を及ぼすことがわかっています。がん患者さんは、がん種にもよりますが、30~80%の方が体重減少をきたすと言われています。その体重減少にはがん関連体重減少(cancer associated weight loss:CAWL)とがん誘発性体重減少(cancer induced weight loss:CIWL)と呼ばれる二つの要因があると考えられています。がん関連体重減少とは病変部位による影響、精神・神経的な要因、治療による影響、嗜好の変化などが要因として挙げられます。がん誘発性体重減少は、代謝異常などから引き起こされるもので、がん悪液質と呼ばれます。がん悪液質とは、がんや生体反応によって腫瘍由来因子や炎症性サイトカインが上昇し、神経内分泌の異常によって引き起こされる、安静時熱量消費の増大、筋肉量の減少、体重減少を象徴とする代謝障害です。しかし、このがん悪液質は、病態の把握が難しく見逃されていることが多いとの研究もあり、管理栄養士の介入及び、適切な栄養管理が行えない妨げになっているとも考えられています。がん悪液質には前悪液質(pre-cahexia)、悪液質(cahexia)、不可逆的悪液質(refractory-cahexia)の3段階のステージがあると言われており、これら、3段階のステージを理解し、適切な栄養管理を行い、栄養状態悪化の進展を防ぐことが、治療の完遂、がん患者さんの生命予後延長に繋がると考えられます。そこで我々、栄養管理室では、がん病態栄養専門管理栄養士の資格をもった管理栄養士が栄養サポートチーム、緩和ケアチームに所属、より高度な知識と技術、経験をもって、がん治療を行う診療科と連携し、がん患者さんに対して、前悪液質(pre-cahexia)の段階、または、至る前からの積極的な栄養管理やステージごとの適切な栄養療法が行えるように活動しています。当院では今後、医師、コメディカルが共通して悪液質の段階が把握可能となる評価法なども導入していく予定です。医療スタッフが、がん患者さんの栄養状態や悪液質のステージを適切に把握することで、より切れ目の無い栄養療法が可能になると考えています。さて、がん治療においては、栄養療法といった支持療法が重要であると述べてきました。栄養療法、必要栄養量の投与は重要なポイントではありますが、「食」はがん患者さんにとって身近かつ重要なものです。一歩間違えれば食事が負担・苦痛となってしまう場合もあります。栄養状態の改善を目指すことは重要ですが、我々、管理栄養士は患者さんにとって「食事」とはどんな意味を持つのか。その意味を考えながら日々業務にあたることも重要だと考えています。数値だけを見るのではなく、人を診る栄養管理で一人でも多くのがん患者さんに、「食」を通じて幸せや喜びを伝えていけるように、栄養管理室一同精進していきたいと思います。