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栄養士の活動

がん患者さんに喜ばれる食事を目指して
 九州がんセンターは福岡市中心部から南8㎞に位置し、周囲は閑静な住宅街にあり、遠くに背振・宝満の連山を望む景勝地にある411床のがん専門病院です。当院は2016年3月に新しく建て替わり、≪『病む人の気持ちを』、『家族の気持ちを』尊重し温かく、思いやりのある、最良のがん医療をめざします≫を基本理念としています。栄養管理室でも、この基本理念を実現するために、様々な取り組みを行っています。
 近年、がん治療は集学的治療の大きな進歩により、長くつきあう病気に変わってきていますが、反面、副作用による食事への影響は少なくありません。このような諸症状を少しでも和らげるため、食欲不振や吐気に対し、さっぱりと食べてもらえるよう調整した食事や、1人分の食事が入らない方へ量を調整した食事、また放射線治療時などの口内炎や、嚥下に考慮した食事など、患者さん一人ひとりの症状に対応した食事を提供しています。さらに、2021年3月から、麺類・お好み焼き・巻き寿司・カレーライスなど、入院患者さんが、アンケートで『食べられそう』と回答した料理・プラス果物だけ、のシンプルな食事、『単品食』の提供を開始しました。
 また、治療中であっても『心和むひとときを感じて頂きたい』『食に対する満足度を高めたい』『憩いの場を提供したい』との思いから、2015年に調理師、栄養士、医師、看護師、薬剤師、言語聴覚士、事務部など多職種の有志で『九州がんセンター食を語ろう会』を編成し、『食事』について話し合いを継続しました。そして、2016年から、副作用に苦しむ患者さんに『手作りスイーツの提供』を開始しました。記念すべき第一弾は特製チーズケーキを提供しました。苦労して作り上げたチーズケーキは調理師自ら、患者さんのもとで最終盛付を行い提供しました。栄養士もスイーツに添えるプレゼントカードを手作りし、運搬用のワゴンを飾りつけ、イベント性を高めました。以降は、1年間に8回(8個病棟でそれぞれ1回/年ずつ)提供を続けています。ケーキ以外に、プリン・ア・ラ・モード、ブラマンジェ、焼き菓子等も好評でした。サービス開始から5年経過した2021年は、大掛かりなリニューアルを行う予定です。より多くの患者さんに喜んでいただけることを期待しています。
 当院では2015年4月より、患者さんの御希望に柔軟かつ迅速に対応するため、調理師が栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)のラウンドに参画しています。患者さんとのコミュニケーションを図れ、食に対する悩み・不満・御希望・そして喜びや感謝の声を直接伺うことが出来た事で、大きな刺激となりました。患者さんと直接対話することで、気持ちを汲み取りながら対応する姿がより鮮明となり、自らが調理したメニューの摂食量に関心を持ち、食べられなければ更なる工夫を行うなど、調理師個々のモチベーション向上は、栄養管理の充実に寄与していると考えます。現在は、コロナ禍のため調理師の参画を休止しており、一日も早い再開を望んでいます。
 最後になりますが、がん治療の分野における栄養管理室の役割は大きくなっています。今後は外来化学療法センター、緩和ケアでの栄養管理、臨床研究などの充実も期待されています。新しい九州がんセンター栄養管理室として中身もリニューアルし、『一食入魂』で精進していきたいと考えます。