栄養士の活動
【はじめに】
国立循環器病研究センター(以下、国循)は、循環器病(心疾患と脳血管疾患の総称)を対象とする唯一のナショナルセンターであり、「病院」「研究所」「研究開発基盤センター」の3部門が連携して循環器病の究明と制圧に挑んでいます。食事も治療の一環であるという方針のもと、2005年頃より「塩を軽く使うからこそ美味しい」の考えに基づいて調理し、1食当たり塩分2g未満に制限しているのに美味しいと好評を得ております。このような声に応え、高血圧の治療食としてだけではなく循環器病予防の啓発も目的に、上記の減塩の考え方を“かるしお”としてコンセプト化したレシピ本を出版しました(国循の美味しい!かるしおレシピ、セブン&アイ出版,2012)。さらに2017年3月にかるしおレシピシリーズ6冊目になる「認知症リスク減!続々国循のかるしおレシピ」を出版しました。
【認知症予防を目指した“続々かるしおレシピ”】
栄養の機能性成分による認知症の発症・進展予防は古くから研究されています。2015年に米国の研究者により認知症予防に効果的な食事法「マインド食」が提唱されました※。マインド食では10種類の推奨食材と5種類の避けるべき食材およびそれらの摂取頻度を定義し、厳格に守った場合だけでなく半分程度守った場合でも認知症抑制効果があるとされ、日々の食生活にパターン的に取り入れやすい予防法として注目されています。本書では、だし汁や八方だしを活用して素材のうまみを引き出し、少ない調味料で美味しく仕上げるかるしおの基本はそのままに、マインド食の考え方をプラスしたオリジナルレシピを掲載しています。意識しないと取り込みにくい、ナッツやベリーなどのマインド食推奨食材を上手に組み込めるよう国循の調理師と管理栄養士が協力し、試行錯誤して作り上げました。
【料理教室で実演】
かるしおレシピを身近に感じていただけるよう、料理教室を2010年より継続開催してきました。調理師から直接技術を学べる機会として好評を頂いています。2017年5月に近隣の千里金蘭大学との共催にて実施した料理教室では、“続々かるしおレシピ”からメニューを選び、参加者の方々と調理を行いました。“普段から薄味にしているけど、こんなにおいしくはできない。”“家族にも作って食べさせてあげたい”という意見も聞かれ、より一層の意識の向上に役立てていただいたのではないかと感じています。
【おわりに】
今後もおいしい減塩食をより多くの方に食べていただけるようにかるしおプロジェクトを多角的に推進していきます。減塩に対する正しい認識を広めるとともに、食品業界などと連携し、国民が健康で一生涯をすごせるよう食生活の改善を目指し、循環器病予防に取り組んでまいります。
※Morris MC, et al. MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer's disease. Alzheimers Dement. 201511(9):1007-14.